オク氏夫人伝 フォトエッセイ対訳(3)

p8.

監督のことば

最初のシーン。無彩色の世界に、自分の色を持つオク・テヨンが立っていることを望みました。そのため選んだのが赤でした。赤い服を着て、赤い紐に縛られ、石に打たれて流す血さえも赤でした。そして、彼女は無彩色の世界に光を放ちながら歩いて行くのです。最終回、海を眺めながら真っ白な泡のような最後の色を得たあの時、そしてそれが奴婢クドクのくすんだ白とは全く異なる眩い白であったあの時は、もはや過ぎてしまったにもかかわらず、まだ私は心の中のオク・テヨンとチョン・スンヒを手放せずにいることに気づきました。

正直なところ、『オク氏夫人伝』の一番のファンは、私でした。素敵な台詞に魅了され、台本に出てくる主な台詞を丸暗記したのも私であり、大事な台詞に差し掛かるたび、俳優たちにその部分を強調してほしいと頼んだのも私でした。

世界で最も美しい感性を持つ脚本家パク・ジスクさん、私のキャリアで出会った方のうち、最高の俳優だと自信を持って言える俳優イム・ジヨンさん、生来のクリエイティブな才能に恵まれた努力派の天才かつ魅力の塊である俳優チュ・ヨンウさん、そしてシーンの一つ一つをすべて意味あるものにしたすべての俳優のみなさん、未来のスター、キム・ジェウォンさん、ヨヌさん。彼らの姿が、そのキャラクターの夢が、フォトエッセイのカットごとに息づいています。そして、そのすべてのカットの見えないところで一つ一つシーンを作りあげた数百人のスタッフと、彼らの汗があります。

軽やかかつトレンディにフォトショップ処理を施したような画面ではなく、クラシカルで深みのある画面を作りたいと望みました。それが波乱万丈な一人の奴婢の感動の物語に相応しいと思ったからです。人生とは、それが誰であれ、すべての人に価値があり、それに伴う深い色があるものです。そのため、何度も夜を徹し、スタッフのアイデアを積み重ねていきました。話題になった第2話の公演シーンも、大好きなオペラのフェスティバルを撮った一枚の写真から始まり、この過程で全く新しいステージに進化したものでした。

韓国の四季を美しく映し出したいという、私のもう一つの目標のために、俳優とスタッフはとても苦労されました。奴婢たちの過酷な人生を雪と一緒に撮りたいという私の意志のせいで、雪山と吹雪の中に駆り立てられ、セットの中で撮影していても、どこかで花が咲いていると聞けばすぐに駆けつけなければなりませんでした。

セットも屋外に実在する場所のように見せたかったのです。特に裁判所のシーンは、演劇の舞台のように活用し、演劇を見る人はそれが現実の場所であるかのような気分を感じて欲しいと思っていました。そのため、セットの素材から照明まで緻密に計算し、影絵劇の形式を要所要所取り入れられるよう、格子戸に貼る障子紙まで様々な種類をテストして選びましたし、感情の深みを表現するために正方形のレイヤーを重ねました。スタッフの誰もが、決して簡単にOKを出しませんでした。セットに太陽と月を作ったり、夕焼けを再現したりしました。苦労して作ったセットを壊した後、周りを真っ暗にし、時空を超越して人物のドラマだけにフォーカスを当てもしました。

『オク氏夫人伝』はまた、色と質感がものをいうドラマでもあります。奴婢の時のクドクは無彩色と白に埋もれていますが、両班になった後のテヨンは、一人その中で自分だけの色を持ちます。そして、キャラクターが成長するにつれ、それらはためらいを脱ぎ捨て、花のような香りと色を持つようになります。そのため、使われた衣装やアクセサリーもすべて『オク氏夫人伝』ならではのデザインで手作りし、制作しなければなりませんでした。

主人公の動線と、それによるリアクションが重要なドラマのため、ロングテイクもたくさん活用しました。実はロングテイクは、カットが分割されないため、ルーズな印象を与えることもあります。しかし、撮影監督の一糸乱れぬ指揮の下、フォーカスの移動、カメラパン、マルチカメラの効率的な活用で早い変化を感じさせ、視聴者がまるで短いカットを体験しているような、スピード感を維持しました。第12話のエンディングでテヨンが悪役のソヘと出会うシーンは、こうした形のロングテイクを示す象徴的なものです。

今思えば、脚本家パク・ジスクさんが築いてくれた土台がとても丈夫で堅固だったため、屋根を上手に作って乗せるだけでも褒められたのでしょうが、その土台の美しさに欲が出て、土台の上に城を築きたかった気がします。行間の隅々まで、想像力を極限まで具現化したいと思いました。ドラマは一人では作れないため、シナジーが集まった時、良い作品が生み出されます。長い間一緒にやってきた有能なスタッフ、俳優たち、身を粉にする演出部、信頼して下さったプラットフォーム、制作会社がすべてそろったからこそ、近頃ではなかなかお目にかかれない、「我こそは主」との意識が生まれました。私は本当に幸運でした。こんなに良い方々と仕事をすることができました。

いつもドラマを終える時がくると、キャラクターと別れがたくて、つらくなります。

オク・テヨンとチョン・スンヒとも、これからは夢で会い続けることになるのでしょう。人生は時に残酷です。常に胸のすく結末を与えてくれるわけではありません。曲がりくねった私たちの人生は、ドラマと違って終わりもなく、絶え間なく続いていきます。ドラマは過酷な現実から逃れるファンタジーでもありますが、時にはまた現実を鋭く覗き込む役割も果たさなければなりません。オク・テヨンは、そんな私たちの人生を投影する、鏡のような主人公です。そして、どんな苦難にも揺るがず、正しい道を歩むオク・テヨンから、希望のファンタジーを見出していただければと願っています。常に幸せであることはできませんが、理解と愛があれば、ついには私たち皆が幸せになる道が拓けるでしょう。数々の血と汗がにじむ『オク氏夫人伝』が、良いドラマだったと人々の記憶に残るよう願っています。

このフォトエッセイの一枚一枚には、何百もの方々の努力がこもっています。そんな私たちの努力を喜んで見てくださり、励ましてくださったすべての方へのプレゼントになれれば幸いです。

フォトエッセイのために努力してくださったSLLパク・ジュンソ代表、ファンボ・サンミEP、チョ・ソンフンPD、チェ・ボユン監督、そして、制作会社COPUS KOREAの関係者の皆様、ありがとうございました。

特に、私たちのドラマを愛してくださったすべての皆様!ありがとうという言葉では足りないほどの感動を感じます。皆様こそがこのドラマの本当の主人公です。

本当にありがとうございました。

演出 ジン・ヒョク

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